【新提案】科楽舎で没入体験教室「アトム・クエスト」

壁いっぱいに飛びまわる空気の分子と,実際に飛んでくるクッション材
1年少し前,「科楽舎」の設計打ち合わせ会で,ある提案をしました。
「壁の3面を白く,できるだけ凹凸なくして,没入映像体験ができるようにしたい」
メンバーや設計士さんに理解してもらうために,簡単な模型を作ってシミュレーションしたり,金額が上がらないように仕様の提案をしたり。一方で「どんなふうな内容だと効果的か」「機材は何が必要か」などを,ここ2年ほど頻繁に東京での仕事を受けていたのを利用して,東京・横浜・埼玉・大阪・京都などの施設やイベント,展示会に足を運び,プロジェクションやイマーシブの世界を研究していきました。また,勤務先の玉野光南高校情報科でも生徒実習としてプロジェクションに取り組みました。
科楽舎の高い梁にプロジェクター3台を取り付ける作業は業者さんに依頼しましたが,それ以外はすべて自分で取り組み,ついに2026年8月29日,9月からのレギュラーコース「科楽アカデミー」の参加者向けの講座でのコンテンツ披露の運びとなりました。
第1弾のタイトルは,イマーシブサイエンス「アトム・クエスト〜アリストテレスを論破せよ!」。
低学齢期の子どもたちに,科学(理科)の最初のステップとして原子・分子を教えることは,これまでの理科教育を根本から変革する可能性があることを,仮説実験授業は証明してきました。世界的にも類を見ない取り組みです。
それは《もしも原子が見えたなら》という仮説実験授業を代表する人気の授業書により導入されるのが普通です。
しかし,私は「もっと別の原子・分子の導入の切り口があるのではないか?」と思い続けてきました。原子の存在をイメージできるという特長はそのままに,原子の「発見」からそれが認められるまでの2000年以上の歴史,原子が発見されなかったら?そして原子分子の圧倒的な「イメージ」。
参加者は「頑固なアリストテレスに原子分子の存在をわからせてやりたい!」と思いながらも,「え??水素にも重さはあるのかな?軽さかな?」と惑いながら,それでもアリストテレスに「まいった。君たちが正しい。原子はある」と言わせるべく,取り組んでいきます。(まだそこがシックリくる流れにはできていませんが)内容的には相当に高度で,中学生以上を対象にしたいところですが,体験を混ぜ込むことで小1からでも「なんとなくわかったかな」と思えることを目指しました。「わからないけど楽しい」は「わかったけどつまらない」より遥かに意味があります。いつかわかったときにまた感動できます。楽しかった思い出は,それをきっと可能にします。
「アトム・クエスト」の設計は,AI(Gemini)と二人三脚でした。まだ教育用AIがない現状では,AIの提案より私の知識(仮説実験授業に学んだもの)のほうが上でした。しかし,中にはハッとするAIの提案もあり,AIとの協働による講座設計に,AIによるコンテンツを散りばめ,さらに体験を重視したワークを盛り込んだ100分の講座が完成しました。
AIによるプログラミングで空気の分子の様子をシミュレーション(シューティングゲーム機能含む)したり,「マグデブルクの半球」の分子シミュレーションを作成して視覚化したりという,私のプログラミング能力では難しいレベルのことも苦もなく実現でき,AIアリストテレスやAIガリレオが語りかける動画作成や,リアルタイムAIアリストテレスが討論したり,といったこともそれなりに導入することができました。
科楽舎の仲間から「感量0.01gの安価なはかり」の紹介をしてもらって,空気の重さが簡単に量れることがわかり,実験的にアリストテレスの主張(原子はない,ものには重さを持つものと軽さを持つものがある)を論破できる見込みが立ちました。
映像体験に体を使った体験,デジタルとリアルを縦横無尽に組み合わせたプロトタイプが出来上がりました。
前日には科楽舎の仲間との打ち合わせ会を行い,万全の態勢で8月29日を迎えました。
<<コンテンツの中身>>(一部省略)
・【イマーシブ映像】による科楽アカデミーへのいざない

宇宙から科楽舎,そして体の中へ旅をする
・【体験】紙を半分に何回切れる?

紙は何回半分に切れるか?
・【AI動画】デモクリトスとアリストテレスの主張

AIアバターがしゃべるのに合わせて口も動いています
・【リアルタイムAIアバター】アリストテレスへの質問

プロンプトを設定したアリストテレスが質問にそれなりに回答します
・【実験】空気に重さはあるの?

0.01gまで測れると,空気の重さも実験できます
・【イマーシブ映像】もしも空気が見えたなら

今回は使用しませんでしたが,シューティングゲームもできます。レア原子に当たると解説がポップアップ
・【実験】水素には「軽さ」がある?
・エアーフレッシュによる空気の分子を抜く競争

しゅぽしゅぽ(空気の分子を取り出す)競争。0.01gまで測れると競争ができます
・【予想】頭の上に載っている空気の重さ
・【シミュレーション】マグデブルクの半球の分子シミュレーション

なんとたった10分で作成できた分子のシミュレーション

空気が球を押す力を体感してもらいます

マグデブルグの半球の綱引き実験
・【お話】もしも「原子」を知らなかったら?
・【イマーシブ映像】ガリレオからアリストテレス,そして参加者へのメッセージ

若き日のガリレオを生成し,希望たっぷりにメッセージを語りかけます
・【工作】空気の4種の分子模型作り

分子模型は酸素,窒素,水,二酸化炭素の4種類を作ってストラップにしました
<<参加者の感想・評価>>
全員が「たのしかった」と回答。特に保護者は「5」が100%。
( )は5段階評価/5が最高
【子どもの感想】
●小5:分子の動きが気温によって違うことが分かった。すごかった。(4)
●小4:分子の模型が作れて楽しかったです。(5)
●小3:真っ赤なパンツみたいな水分子や、顔がおさるに似ているCO₂、いろいろな形の分子が空気中にたくさんあると聞いてイメージしている。吸っている空気には目に見えないけれど、いろんな粒があることが分かってびっくりした。(5)
●小3:綱引きが楽しかった。なかなか外れなくて不思議だった。(4)
●小3:切るのが楽しかった。(5)
●小2:模型作りが楽しかった。空気を抜いたら金属のボールを引っ張っても取れないのが面白いと思った。(5)
●小1:風船をくれてありがとうございます。また実験をやらせたいです。(5)
●小1:また来る。(5)
【大人の感想】
◯想像していたより楽しかったです。子どもも楽しそうでした。 施設もとてもキレイでした。先生たちも優しそうで安心しました。(5)
◯原子という難しいテーマだったけれど、小学生でも楽しく学べるとても良い内容だった。模型作りも楽しかった。(5)
◯最後のストラップを作るのが楽しかった!と子どもが最後に言っていました。最後だから印象に残ったのかも。(5)
◯大人も楽しめる内容で、興味深く参加させていただきました。AIを使ったり、映像も本格的で、色々な感性を刺激される授業で、始まるのがとても楽しみです。(5)
◯動画のインパクトがありました。予想して、実際に手を動かして実験する過程を楽しむことができました。(5)
◯大人でも、とても楽しめる内容だった。そしてとても勉強になった。子どもも楽しそうにしており、大満足です。これから楽しみです。よろしくお願いします。(5)
◯子どもの集中力が続きませんでしたが、原子がなかったらゲームもできなかったなどは子どもに伝わっていました。実験は前向きに取り組めました!!! 私自身楽しかったですし、勉強になりました。ありがとうございました。(5)
◯映像と実験で原子の重さを感じることができました。いつも楽しい教室を開催してくださりありがとうございます。(5)
◯単発の講座になかなか参加できなくて今回が初参加でした。テーマだけ見ると「子どもには難しいかも…うちの子大丈夫かな?」と少しドキドキでしたが、とても分かりやすく興味深い講義で、いつの間にか私も引き込まれていました。探究コースも楽しみです!(5)
AIの時代には何もかもが大きく変わります。変わるはずないと思われていたものもきっと変わります。今必要なのは,変化を受け入れる若い気持ちと,それを楽しむ自由な心です。
次回は,さらに工夫を重ねた原子の学びのコンテンツを企画しています。

